日本には、高齢者を敬う2つの祝日が存在しています。それが「老人の日」と「敬老の日」です。見た目は似ているこれら2つの祝日ですが、実は目的や歴史、祝い方に違いがあるのをご存知でしょうか。
「老人の日」と「敬老の日」の違いを詳しく解説し、高齢者への感謝の気持ちを深めていきましょう。
■「老人の日」とは
「老人の日」は、毎年9月15日に設定されている記念日です。この日は、1966年に制定された「老人福祉法」に基づき、高齢者の福祉を促進することを目的として制定されました。
背景にあるのは、高度経済成長期以降の急速な高齢化社会の到来です。高齢者の健康や生活を社会全体で支えていく必要性が高まり、「老人の日」は高齢者への理解と尊敬の念を深めるための日として位置づけられたのです。
「老人の日」の起源は、1950年代から各地で行われていた「としよりの日」がルーツとなっています。当時は地域ごとに行われていたイベントが、全国的な祝日へと発展していきました。2003年以降は法改正により、「老人の日」と「敬老の日」は別の祝日として定められています。
■「敬老の日」とは
一方の「敬老の日」は、毎年9月の第3月曜日に祝日として制定されています。この日は、「多年にわたり社会に尽くしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」ことを目的としています。
「敬老の日」の起源も、1950年に兵庫県多可郡野間谷村（現在の多可町）で始まった「としよりの日」が発展したものです。1966年に全国的な祝日として定着しました。
「敬老の日」は、高齢者を敬う日として広く知られており、全国各地でイベントや式典が行われます。特に家族が集まって高齢者に感謝の気持ちを伝える機会が増えるのが特徴です。2003年の「ハッピーマンデー制度」の導入により、9月15日から現在の9月第3月曜日に移動し、3連休が生まれたことで、さらに多くの人々に親しまれる祝日となっています。
■「老人の日」と「敬老の日」の違い
「老人の日」と「敬老の日」は、どちらも高齢者を敬うための日ですが、目的や日付、祝われ方に違いがあります。
まず、日付の違いです。「老人の日」は毎年9月15日で固定されているのに対し、「敬老の日」は9月の第3月曜日に設定されています。この違いは、2003年の「ハッピーマンデー制度」の影響で、「敬老の日」が月曜日に移動し、3連休を作るための措置となったことが背景にあります。
次に、目的の違いです。「老人の日」は高齢者福祉の促進や支援を目的としており、9月15日から1週間は「老人週間」として高齢者に関する社会的な活動やイベントが集中的に行われます。一方の「敬老の日」は、個人的なレベルで「長寿を祝う」「高齢者を敬う」ことに重点が置かれ、家族や地域で感謝の意を伝える機会として祝われます。
最後に、祝われ方の違いもあります。「老人の日」には、高齢者の生活や福祉について考えるイベントや啓発活動が行われることが多いのに対し、「敬老の日」は家族が集まり、食事やプレゼントなどで直接高齢者を祝うことが主流です。
このように、「老人の日」と「敬老の日」は、似ているようでいて目的や日付、祝われ方が異なる2つの祝日なのです。
■日本における高齢者を敬う文化の変遷
日本には古くから高齢者を敬う文化が根付いており、家族や地域社会において年長者に対する尊敬の念が深く息づいていました。特に農村社会では、高齢者の知恵や経験が重視され、大きな役割を果たしていました。
しかし、戦後の急速な都市化や核家族化の進行により、同居する家族が減少し、家庭内での高齢者の存在感は薄れていった。この変化に伴い、社会全体で高齢者を支える仕組みが必要とされるようになり、「老人の日」や「敬老の日」といった祝日が誕生した背景がある。
現代では、少子高齢化が進む中で、高齢者福祉の重要性がますます増している。自治体や企業による高齢者向けの支援サービスや地域の高齢者同士が交流するイベントなど、多様な取り組みが行われている。また、介護制度や年金など、国家レベルでも高齢者の生活を支えるための制度が整備されている。
高齢者を敬う文化は時代とともに形を変えつつも、その根本には変わらぬ「感謝」と「尊敬」の精神が息づいているのだ。
まとめ
「老人の日」と「敬老の日」は、どちらも高齢者を敬い感謝するために設けられた重要な日だが、その起源や目的には違いがある。「老人の日」は、高齢者福祉の促進を目的とした日であり、「敬老の日」は、個々の高齢者の長寿を祝い、感謝の気持ちを伝える日だ。この2つの祝日を理解し、高齢者に対する感謝の気持ちを新たにすることは、私たちの社会が高齢者を大切にする文化を継承していくために大切だ。
また、日本における高齢者を敬う文化は、時代とともに形を変えながらも、その根底には「尊敬」と「感謝」の精神が脈々と受け継がれている。私たちがこれからもこの精神を大切にし、次世代へとつないでいくことが、社会全体で高齢者を支えることにつながるだろう。
