7月31日は日本各地で災害級の暑さとなった。炎天下での部活が熱中症を引き起こす一方で、高校野球「夏の甲子園」も様変わりします。
東京では最高気温が36℃を超え、8日連続の猛暑日となった。埼玉県熊谷市では39℃を超えた。全国914地点のうち、124地点で猛暑日となった。
- 中学生の死者も相次いだ。
- 真夏の甲子園球場対策は?
以上の点について詳しく解説する。
命に関わる暑さ: 熱中症の疑いで相次ぐ死者
週末、熱中症が疑われる死者が相次いだ。
29日、東京都東村山市の民家で91歳の夫と84歳の妻が倒れているのが発見された。部屋にはエアコンがあったが、当時は作動しておらず、窓もドアも閉め切っていた。室内が非常に暑かったことから、警視庁は熱中症の可能性もあるとみて調べている。
また、29日には福島県須賀川市で、80代女性の家族から「熱があり、意識がもうろうとしている」と通報があった。女性は病院に運ばれたが、その後死亡が確認された。部屋の窓は開いていたが、エアコンや扇風機は使用されていなかったということです。
部活帰りの女子中学生が熱中症の疑いで死亡
熱中症は家庭内に限らず、学校の部活動後にも発生する。
28日午前11時ごろ、山形県米沢市内の国道で、部活動を終えた女子中学生が熱中症の疑いで帰宅途中の病院に搬送され、その後死亡が確認された。
米沢市教育委員会の土屋宏教育長は記者会見で「無事に帰すことができず、言葉もありません。大変申し訳ございませんでしたと述べた。
米沢市教育委員会によると、女子生徒はこの日、午前8時半から1時間半近く部活動の練習に参加。約20分ごとに休憩や水分補給をしていたという。
熱中症の危険度を判断する指標「暑さ指数」を確認せず
環境省熱中症予防情報サイト
学校行事の熱中症対策に関するガイドラインでは、部活動などの前に「暑さ指数」を確認する必要があるとされている。しかし、顧問は活動当日に暑さ指数の確認を怠った。
「暑さ指数」とは、「気温」だけでなく「湿度」などの条件も加味して、熱中症の危険性を判断するための指標である。
運動をする場合、暑さ指数が28〜31の場合は熱中症の危険性が高く「厳重警戒(激しい運動は中止)、31以上の場合は原則として運動を中止する必要があることを示す。
31日午後2時現在、東京の暑さ指数は32。これは「屋外での運動は控えるべき」という意味である。
この指数は環境省の「熱中症予防情報サイト」で見ることができる。数値で示されるとわかりやすい。ぜひ参考にしてください。
真夏の甲子園: 選手だけでなく観客も審判も大変
この猛暑の中、8月6日(日)に夏の甲子園大会が開幕する。
各地の地方大会開催時には、熱中症が疑われるケースが相次いだ。7月16日の神奈川大会では、審判が暑さによる体調不良を訴えた。26日の神奈川大会決勝戦では、8回裏に審判の足が硬直して体調不良を訴え、熱中症の疑いで試合が中断された。
選手も困るが、審判や観客も困る。
夏の練習時間短縮: 甲子園出場校による「夏バテ対策」の試み
今年、埼玉県代表となった浦和学院高校野球部の田中宏監督によると、「夏の甲子園に向けて、熱中症予防のために練習時間を短縮しています。通常は1日4時間のところを、夏は1日『2時間』に短縮しています」という。
時間を短くすることで、選手たちは集中でき、かつ熱中症対策にもなる。また、今年から始まった新しい取り組みとして、「夏バテしにくい体作りのために、水分補給の際に水だけでなく、アミノ酸のサプリメントを水に溶かして飲むなど、さまざまな工夫をしています」という。
5回終了後に「クーリングタイム」実施
今年の甲子園では、暑さ対策として試合ルールも変更される。
日本高校野球連盟によると
日本高等学校野球連盟によると、今大会から5回終了後に10分間の休憩をとる「クーリングタイム」が設けられた。
この「クーリングタイム」には
◇選手はグラウンドに出てはいけない。
◇通路にクーラー、冷凍庫、サーモグラフィーなどを設置する。
◇スポーツドリンクやネッククーラーを首にかける
水分補給や体を冷やす時間を設けた。
また、暑さ対策で選手の役割が増えるため、ベンチ入りできる人数を2人増やし、20人とした。
一昔前までは真夏でも一般的に当たり前だったことが、今では当たり前ではなくなっている。命が危険にさらされることを前提に、練習でも試合でも新たな工夫が求められるようになった。
(2023年7月31日16時30分頃放送「news every. 」より)
※熱中症警戒アラートは、熱中症を予防することを目的に、環境省と気象庁が共同で発表して、暑さへの「気づき」を呼びかけるための情報です。熱中症警戒アラートを発表する基準は「暑さ指数(WBGT)」です。暑さ指数は「気温」「湿度」「輻射熱(地面や建物・体から出る熱で、温度が高い物からはたくさん出ます)」を取り入れた、暑さの厳しさを表す指標です。この暑さ指数が、全国を58に分けた府県予報区等のどこかの地点で、「33」以上と予想した場合、熱中症警戒アラートが発表されます。熱中症警戒アラートが発表された所では、日頃から実施している熱中症対策を、普段以上に徹底することを心がけてください。