筋トレをすると体はどのように変化するのか。運動しなくても能力を高められる時代に?

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筋トレによる効果は、健康的な生活を送るために必要な身体機能や機能を強化することができることが知られています。筋肉トレーニングは速筋(白筋)で糖質をエネルギー源とし、瞬発力を発揮する無酸素運動で、ウォーキングや水泳などは遅筋(赤筋)で脂質を燃焼する有酸素運動です。いずれの運動においても体内でエネルギーを消費する際には高エネルギー貯蔵物質であるATP(アデノシン3リン酸)が分解され、AMP(アデノシン1リン酸)へと変換されます。

骨格筋細胞内のAMP濃度が運動のエネルギー消費により上昇すると、細胞質の酵素AMPキナーゼが活性化されます。AMPキナーゼはα・β・γの3サブユニットから成る三量体タンパク質で、αサブユニットがリン酸化されると活性型となります。通常、生体内でタンパク質のリン酸化/脱リン酸化は一定のリン酸化状態を保っており、リン酸が付いたり離れたりを繰り返しています。

運動によりAMP濃度が上昇するとγサブユニットにAMP分子が結合し、αサブユニットのリン酸基の離脱が抑制されます。こうして長時間、αサブユニットがリン酸化状態を保ち、活性化状態が維持されることになります。また、活性型AMPキナーゼは種々のタンパク質をリン酸化し、その活性を調節します。脂肪酸合成の初発段階を触媒するアセチルCoAカルボキシラーゼ1はアセチルCoAからマロニルCoAを合成します。AMPキナーゼはこの酵素をリン酸化し、活性を抑制することにより脂肪酸合成、トリグリセリド合成を低下させます。

それと同時にコレステロール合成の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素をリン酸化して活性を抑制し、細胞内コレステロール合成を低下させます。エネルギーを使い切った時点で、さらにエネルギーを費やして脂肪酸やコレステロールを合成する必要はないので、これらの合成経路を遮断します。さらには脂肪酸β酸化経路を活性化し、脂肪酸燃焼を活性化させます。運動することにより骨格筋で積極的に脂肪酸が燃焼されると、血液中のトリグリセリド(中性脂肪)の低下に結びつきます。

一方、AMPキナーゼは骨格筋による血液中のグルコース取り込みを上昇させる作用も持ちます。先に説明したように血糖値が上昇した際、骨格筋はその75%程度を取り込み、グルコース貯蔵庫のような役割を果たしています。これは血糖値の上昇に伴い膵臓(すいぞう)からのインスリン分泌が上昇し、血液中のインスリンと骨格筋細胞表面のインスリン受容体が結合し、細胞内へとシグナルを伝達したことにより生じます。

運動すると血糖値が下がる仕組みとは

運動すると、体内でエネルギーが消費されます。その際、骨格筋は血液中のグルコースを取り込んでエネルギー源とします。骨格筋は血糖値の約75%を調節する役割を持ち、血糖値が上昇するとインスリンというホルモンが分泌されてグルコースの取り込みを促進します。しかし、糖尿病やメタボリックシンドロームの場合、インスリンの働きが低下して血糖値が下がりにくくなります。このような状態をインスリン抵抗性と呼びます。

運動すると、インスリンに頼らずに血糖値を下げることができます。そのカギとなるのが、AMPキナーゼという酵素です。AMPキナーゼは、骨格筋でエネルギーが不足したときに活性化され、グルコースを取り込むための輸送体を細胞表面に移動させます。これにより、インスリンの力を借りずに血糖値を下げることができます。AMPキナーゼは、血糖値の調節だけでなく、持久力の向上や筋肥大の促進など、運動によるさまざまな効果のマスターレギュレーター(主要制御因子)としても機能しています。

食品成分でAMPキナーゼを活性化できる

AMPキナーゼを活性化するには、運動する必要がありますが、実は食品成分にもAMPキナーゼを活性化するものがあります。例えば、柑橘類に含まれるナリンゲニン、お茶に含まれるカテキン類、ブドウ果皮に含まれるレスベラトロールなどがその代表例です。これらの成分は、AMPキナーゼを活性化することで、運動と同様の効果をもたらす可能性があります。以下に、それぞれの成分の特徴と効果について紹介します。

  • ナリンゲニン:柑橘類に含まれるフラボノイドの一種で、苦味の成分です。AMPキナーゼを活性化することで、肝臓での脂肪酸の分解を促進し、脂肪肝の予防や改善に効果があるとされています。
  • カテキン類:お茶に含まれるポリフェノールの一種で、渋みや色の成分です。AMPキナーゼを活性化することで、骨格筋でのグルコース取り込みを増加させ、血糖値の低下や持久力の向上に効果があるとされています。特定保健用食品としても認可されています。
  • レスベラトロール:ブドウ果皮に含まれるポリフェノールの一種で、赤ワインの色や香りの成分です。AMPキナーゼを活性化することで、骨格筋や肝臓での脂肪酸の分解を促進し、肥満や糖尿病の予防や改善に効果があるとされています。また、長寿遺伝子サーチュインを活性化することで、老化防止にも効果があるとされています。

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AMPキナーゼは、運動することで活性化される酵素ですが、食品成分や薬物によっても活性化することがわかってきました。これらの物質は、運動しなくても運動能力を高めることができるという点で、注目されています。しかし、運動しないでAMPキナーゼを活性化することには、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

メリットとしては、運動が苦手な人や運動ができない人にとって、運動と同様の効果を得ることができるということです。血糖値の調節や持久力の向上、筋肥大の促進など、運動による健康増進やパフォーマンス向上に役立つ可能性があります。また、運動する人にとっても、食品成分や薬物を併用することで、運動効果をさらに高めることができるということです。

デメリットとしては、運動しないでAMPキナーゼを活性化することには、安全性や有効性に関する不確実な点が多いということです。食品成分や薬物の摂取量やタイミング、個人差や副作用など、まだ解明されていないことが多く、過剰摂取や不適切な使用によって健康に悪影響を及ぼす可能性もあります。また、運動しないでAMPキナーゼを活性化することは、運動による他の効果や楽しさを得ることができないということです。運動は、心肺機能や免疫機能、骨密度や関節可動域など、AMPキナーゼとは関係ない部分にも良い影響を与えます。また、運動は、ストレスの解消や気分の向上、仲間との交流など、精神的な満足感をもたらします。

運動しなくても運動能力を高められる時代になりつつあると言われていますが、食品成分や薬物に頼るのではなく運動することにはかけがえのない価値があります。

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