声が出にくい時の体操
理学療法士 泉 先生 言語聴覚士 中野 先生より資料をいただきましたので紹介します。
最近、「声が小さくなって聞き取りにくくなりました」とか、「電話の声が聞き取れなく
なった」とか、お 困りの相談を受けました。
一般的に言われている対処方法をお伝えいたします。
ここで大切な事 は、ご本人が声を出したいと思うことが大切となります。
発声のメカニズム 声を出すためには、肺に空気を取り入れて、声帯を震わせて、
空気を振動させます。
振動した 空気が口の形で声(音)が出ます。
この中で、空気の取り込み能力と口の形を作る構音機能に ついてお伝えいたします。
生活の中で会話の機会を増やす 生活の中で、挨拶を必ず行って頂きましょう。
人によっては、うなづきだけで返事をされる方があ ります。
まずは、声に出して、挨拶していただけるまで待ちましょう。
できる限り、声を出す機会を 奪わないように周囲の方の関わり方が重要になります。
呼吸について
・吸気(息を吸う)で肺は膨らみ、呼気(息を吐く)で肺はしぼみます。
・吸気に関与するもの:横隔膜>>外肋間筋
・呼気に関与するもの:肺自体の弾性力>内肋間筋
・不等号の記号は依存度の大小を表しています。吸気の75%は横隔膜に依存し、
外肋間筋 は 25%しか依存していません。
呼気は吸気で膨らんだ肺自体の弾性で元に戻ります。内 肋間筋は呼気の主役ではありません。
肺の中の空気を出すことが大切
肺に空気を入れるためには、一度、空気を吐き出す必要があります。
体操1(腹式呼吸強化訓練)
仰臥位(仰向け)に寝て、お腹に重しをのせます。(約 2kg目安)その状態で、深呼吸を行いま す。
鼻から3秒吸って、口から6秒かけて口から吐き切ります。
ポイントは、息を吐くときに、重しが上がる事(一番上)、下がる事(一番下)を認識しながら
行うこ とです。
(へその下(丹田)を意識します。) 胸式呼吸は、空気の入る量が少なく、頭部の筋肉を緊張
させるため、声帯が震えにくくなります。
持続呼気時間の延長を促します。
発声する為には、ある一定の空気量が必要になります。
体操2(肺活量増加)
風車や拭き戻し、ピンポン玉、短冊などを利用して、楽しみながら息を吹きかける動作を
繰り返します。
また、顔の前にティッシュペーパーをぶら下げて、息を10秒以上吹きかけます。
ティッシ ュや風車が動くことを確認しながら行いましょう。
鳩尾(みぞおち)を上方へ伸ばした姿勢で行い ましょう。
10 秒できるようになったら、15 秒、30 秒と時間を長くしていきましょう。
体操3(呼気圧強化訓練)
ペットボトルに水を入れて、ストローを挿し、ブクブクと息を吐きます。 この時、
吐き切った際、誤って吸い込まないよう注意が必要です。
構音機能の獲得に向けて
声を出すうえで表情筋はとても重要です。口や顔をしっかり動かせないと、表情が
読み取れなか ったり、声がこもったりします。
まずは、「母音」の口の形を明確にしましょう。
表情筋トレーニング(口の形をしっかり作る)
「あ」は、口角を上げて、上の歯がしっかり見えるように大きく開けましょう。
「い」は、口を真横に開きます。
「う」は、口をすぼめて、前へ突き出しましょう。
「え」は、頬骨の筋肉(笑筋)を上にあげるようにしましょう。
「お」は、上唇を鼻に近づけるよう縦に開きましょう。
体操4発声練習
「ん」「あ」を繰り返します。声を出しながら、口唇をしっかり閉じて、開けることで発声の
基礎を作 ります。
ポイントとして、あくびをした時の状態で「あ」と声を出してみましょう。
基本姿勢としては、鳩尾 (みぞおち)を上方へ伸ばした姿勢で行いましょう。
これは、口の動きを良くすることと、口の筋肉を動かす準備運動を目的としています。
体操5発声練習
「あ」~「あ!」と「あ」を長く発声して、最後に大きく「あ」と締めくくります。
目標は「あ」を10秒以 上で 10 回ほど取り組みましょう。
「あ」~「あ」~「あ!」と間に「あ」を1~2回入れて発声してみましょう。また、抑揚を
つけて行うこ とでノドの筋肉の緊張が変化します。
この運動は、呼気量の調節や、ノドの筋肉の協調性を高めます。
「あ」ができたら「い」「う」に進みましょう。
体操6口唇能力向上練習
口を閉じて、両頬を膨らませて、口唇から息が漏れないようにします。
出来るようになれば、両頬 を指で押してみましょう。
また、右頬、左頬、片側ずつ挑戦してみましょう。これは、口の筋肉を強 化し、
頬の筋肉の柔軟性を高めます。
体操7発声練習の文を読み上げます。
別表を参考に行ってください。ポイントは、一音一音丁寧に発音することです。
上級編1 口唇を震わせます。
息を吐きながら、唇を「ブブブブ」と震わせます。これを行うことで、口唇が柔らかく動く
ようになり ます。
唇を震わせることで、口周囲筋肉を柔軟にします。
上級編2下を震わせます。
息を吐きながら、舌を上の歯に当たるか当たらないかのところで、「ルルルル」と舌を
震わせます。
これにより、舌が動きやすくなり、飲み込みもよくなります。
音読をしてみましょう。
日常生活では、何でも良いので新聞のコラムや小説など、自分の好きな物を音読する
ようにしま しょう。
意識して、声を出す音読に取り組むことによって、声は若々しく保たれるようになります。
引用文献
庄野俊哉著:マスクをしても「通る声」を作る!声のプロが教える スッキリ3分音読、旬報社
- ありさんあつまれ アエイウエオアオア
- かにさんかさこそ カケキクケコカコカ
- さかだちさかさま サセシスセソサソサ
- たのしいたこあげ タテチツテトタトタ
- ならんでなわとび ナネニヌネノナノナ
- はなたばはなびら ハヘヒフヘホハホハ
- まえよりまじめに マメミムメモマモマ
- やっぱりやさしい ヤエイユエヨヤヨヤ
- らくだいライオン ラレリルレロラロラ
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