プール熱(咽頭結膜熱)は、アデノウイルスが原因で主な症状は目の充血、高熱、のどの痛みで、感染力が非常に強いことが特徴です。年間を通して発生しますが、主に6月末頃から夏季にかけて流行します。しかし、特に2023年は9月から異例の流行を見せ始めており、東京都では10月に警報基準となりました。
感染症に詳しい、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、
「これまで咽頭結膜熱は、夏場に多い感染症でした。プール熱という名前の方が一般的に知られるようになり、プールに入ったら感染してしまうなどというイメージを持っている方もいらっしゃいますが、残留塩素濃度の基準を満たしているプールの水を介して感染することはほとんどありません。
しかし、感染力は強く、タオルの共有などで感染が広がることがあります。例年であれば10月は夏の流行が終わり、感染者が少ない時期なので、なぜこの時期に患者数が多いのか、はっきりした理由がわからないのが現状です。
他の多くの感染症にも言えることですが、新型コロナウイルス感染症が流行している間はあまり大きな流行が起こらず、免疫が不十分なお子さんが多いことが、流行拡大につながっているのではないかと考えています。咽頭結膜熱の原因菌であるアデノウイルスは感染力が強いので予防は難しく、これから先の流行の予測も難しい状況です」と語っています。
治療法は基本的に免疫の働きによって自然に治るのを待つことですが、
必要に応じて症状を緩和する対症療法を行います。感染を広げないためには、手洗いや消毒、排便後の適切な処理などが重要です。また、感染した場合は「主な症状が治まったあと、2日経過するまで」は、登園・登校することはできません。
このような情報から、プール熱(咽頭結膜熱)の患者数が急増している理由は、その強い感染力と特定の季節性(特に夏季)によるものと考えられます。また、2023年の異例の流行はさらなる注意を必要とします。
アデノウイルスは、呼吸器、目、腸、泌尿器などに感染症を起こす原因のウイルスです。
1953年に発見され、51の型に分類されています1。病気と関係が深いのは1〜8型で、多くの型があるため、免疫がつきにくく、何回も感染することがあります。
アデノウイルスは一般的に風邪の原因となるウイルスとして知られています。また、ライノウイルス等とともに、「風邪症候群」を起こす主要病原ウイルスの一つでもあります。
アデノウイルス感染症の主な症状は、主に喉の痛み、目の症状 (目の充血や目やになど)、高熱などが見られます。呼吸器の症状:風邪の原因ウイルスでもありますので、鼻水・鼻づまりなどの風邪の症状が特徴的に表れることもあります。乳幼児では、重症事例として重度の肺炎や脳症も報告されており、症状が長引くこともあります。
年間を通して感染者が出ており、6月ごろから増え始め、7〜8月に流行することが多いです。子どもでの感染事例が多いのもアデノウイルス感染症の特徴です。
アデノウイルス感染症の治療法は?
アデノウイルス感染症に対する特効薬は存在しません。そのため、治療は主に症状を緩和する「対症療法」が中心となります。
具体的な治療法は以下の通りです:
- 高熱に対しては、解熱剤が処方されます。
- 喉の痛みに対しては、鎮痛剤が処方されます。
- 目のかゆみや充血に対しては、目薬が処方されます。
これらの治療法は、感染した人が感じる不快な症状を和らげることを目的としています。また、アデノウイルス感染症は通常、1週間〜10日ほどで自然に回復します。
ただし、他のウイルスと比較してアデノウイルス感染症では熱が長く続くことが多いため、こまめに水分を摂ることが重要です。また、重篤な症状が出た場合や体調が急激に悪化した場合は、すぐに医療機関を受診することをお勧めします。
アデノウイルス感染症はどのようにして予防できますか?
アデノウイルス感染症の予防には以下の方法が有効です:
- こまめに手を洗う:外から帰ったときや食事の前、トイレの後などは、石鹸でこまめに手を洗うようにしましょう。手洗い後、アルコール手指消毒薬を使うことで、さらなる予防効果が期待できます。
- 次亜塩素酸ナトリウムで消毒する:アデノウイルスには次亜塩素酸ナトリウムの消毒が効果的です。
- 規則正しい生活をする:バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠など、規則正しい生活を送ることも感染予防につながります。
- 食器やタオルを分ける:家庭内でもタオルや食器は共用しないようにしましょう。アデノウイルスは感染力が強いため、子どもが感染した場合に家庭内で感染が広がるケースも少なくありません。
- プールに入った後はシャワーを浴びる:プールの水を介して人から人へ感染が拡大することが多いため、プールに入った後はシャワーを浴びることが推奨されています。
まとめ
これらの予防策を実施することで、アデノウイルス感染症のリスクを軽減することが可能です。しかし、完全に感染を防ぐことは難しいため、体調がすぐれない場合や症状が現れた場合は早めに医療機関を受診することをお勧めします。